2013/12/30(月)王様ゲーム

「王様ゲーム」金沢伸明(双葉文庫2011年)

 高校1年生のクラスに「王様」なる謎の存在からメールが届き、最初はキスしろという命令からはじまって人間の尊厳を奪うようなものになり、命令に従わなかった場合は恐ろしい罰を受けることに。

 命令は主人公ともいえる金沢伸明の罪悪感を徹底して問いただすものばかりで、作者の作為をちょっと感じてもしまった。

 序盤は陰惨すぎるエピソード連続にめまいを起こしかけたものの、主人公の前向きな行動力で気分が幾分持ち直した。

 死を回避するためにクラス内での覇権争いが起こって、それぞれ派閥を作ったり、人心をいかにつかむかという心理戦が行われ、その人間模様は自分的に好み。

 異常な状況を冷静に分析する無表情な岩村莉愛(いわむらりあ)の存在もチートっぽくて魅力を感じたし、ほとんど会話文で読みやすいのもあって、久々に夢中になって集中して読めた。

 うまいとはいえない文章描写や警察の不可思議な捜査方法、自分の子供が死んだのになぜか平然としている親が出てきたりして首をかしげることしばしだったけど、そこはスルーした。最後のほうで物語に理屈をつけようとして、かなり無理くりなご都合展開になったのは残念だったか。

2013/12/29(日)風水街都香港 (上)

「風水街都香港 (上)」川上稔 イラスト・さとやす(電撃文庫1998年)

 都市シリーズと銘打たれている新装カバー版。異設定な香港が舞台。香港を犠牲にして天界を復活させようとするダブルリーたちと、それを阻止しようとするガンマルと香港商店師団(ホンコン・ヤード)と有翼人少女のアキラたち。

 前作の「エアリアルシティ」のように、書物のなかの世界という、やや難解な設定は解除されてだいぶわかりやすくなっている。けど、この造語群を覚えながら読むのはしんどいかも。

 香港では第五次までの大規模な神罰戦があった過去があったりする。今作でも独特の設定が大盤振る舞いで、感情と翻訳したらいいだろうか遺伝詞(ライブ)、そのほかにも拍詞(テンポ)、詞色(ネイロ)、詞階(オクターブ)といった音楽に関連した造語が盛りだくさんで、風水師(チューナー)や五行師(バスター)らが武器と楽器を合体させたらしき神形具(デヴァイス)を使って、魔法らしきものを遺伝詞として繰り出すアクションもの。

 生み出された大型の虎を四十匹の猫に変えてしまったり、ビル群の無数の窓ガラスが粉砕されて、それらすべてが羽に変化する光景があったりと変化球な能力が読んでて楽しい。

 五行師のジェイガンが早々に死んでしまい、その兄であるジェイガンを訪ねてきた陽気な青年のガンマルは、底知れぬ力を見せつける無双キャラ。香港の危機を救うのかどうか、上下巻なので、これまで駆け足気味というか詰め込み展開が解消されてて、ひとつひとつのエピソードをじっくりと読めるようになっていた。

2013/12/27(金)周公旦

「周公旦」酒見賢一(文春文庫2003年)

 古代中国の周王朝。周といえば太公望呂尚が有名だけれども、この小説は周の勃興を手助けしたうちの一人でである周公旦(しゅうこうたん)を扱っている。

 周公旦の兄である武王が死去し、その武王の後継者である成王はまだ幼児。周公旦が摂政となってなんやかやをすることになるんだけども、太公望のたくらみによって抹殺されそうになる。勃発した反乱を鎮圧することに成功した周公旦だったけれども、身のの危険を感じたのか、周公旦は、周にそこそこ敵対心を抱いている南蛮で未開の地である楚になぜか逃げ込むという手段をとる。

 楚ではいろんな部族がいて、周と良好な関係のあった熊の名の一族の熊繹(ゆうえき)のもとをたずね、儀式である礼を用いて仕える。周公旦には算段があって、楚の文化をある程度引き上げ、そこそこ平定させたところで、いずれ周が楚を制圧しやすくするという布石の面があったと思われ。

 周公旦はその後、改心した成王の要請によって周に戻って再び補佐を担当。そして太公望の治める斉のめざましい発展ぶりに驚嘆。その後、病で死去。

 本作では、食人(カニバリズム)文化のことを神聖な儀式であったとし、慎重に繰り返し書き綴っている。また、楚がいかに蛮族であるかとして、人の頭骨を魔除けとして掲げたり、男たちが男根をしごいて精液を撒き、女の尻を棒で叩く豊穣の儀式などの描写が秀逸だった。異文化の地で、いかに敵対する部族を懐柔させるかで、周公旦は独自の儀式をおこない、自身にその部族の祖先を降霊させて説得してみせる。

 前回読んだ「墨攻」に引き続き、今回も濃厚な文章描写で、理解するのがかなりしんどかった。それでもカルチャーギャップというか、太公望呂尚の老獪ぶりや、周辺諸国の微妙なバランスなど、内政面でうなずくことしきり。

2013/12/26(木)墨攻

「墨攻」酒見賢一 挿画・南伸坊(新潮文庫1994年)

 森秀樹のマンガ版を連想しながら読むことができたのでイメージしやすかったけれど、この原作小説は相当に濃縮してあって、それなりに攻城戦についての知識がないとしんどいだろうなと。

 侵略戦争に異を唱える墨子教団。その教団の戦闘技術などの知識に物理や経済などの見通しがあったくだりは初めて目にしたけれど、これは史実なのだろうか。

 本編は、梁城の要請に応じて墨子教団かr派遣された革離(かくり)が、趙軍2万の軍勢から守城することになり、規律を順守させるためならば味方であろうと殺しまくる。

 民衆の士気をあげるために罪人を処刑して誰かわからないように顔をつぶして趙軍にやられたと偽装して恨みを喚起させるとか、やることなすことえげつない。

 原作小説はマンガ版とは違った結末を迎える。ネタバレになるけれど、革離は最終的に、とある人物によって殺害されてしまう。どうしてそうなってしまったのか、誰が革離を殺したのか、革離が守っていた城はその後どうなったのか。それらを楽しみながら読むのもまた一興。

2013/12/25(水)エスケヱプ・スピヰド(2)

「エスケヱプ・スピヰド(2)」九岡望 イラスト・吟(電撃文庫2012年)

 皆のいた尽天(じんてん)を離れて帝都の東京にやってきた叶葉と鬼虫(きちゅう)の九曜。二人は、巨体の護衛機械兵である菊丸と蓮宮鴇子(はすのみやときこ)と出会う。

 記憶のない鴇子は第三皇女であるけれど、それにしては無銭飲食をしまくっていてお迎えもなしとか理解不能な行動をしている。叶葉によって騒ぎを起こしたところをくまなく回って頭を下げてきっちり弁償して、飲食店の捨家(すてや)で働かせてもらって和気あいあいとしていて、所帯じみた生活風景は好み。

 一巻であった独特な用語が減り、時代劇風な文体っぽいか。どことなく秋山瑞人の「龍盤七朝」やら「攻殻機動隊」に「剣客商売」とかその他のいろいろな作品を連想してしまった。

 この作品シリーズのウリである戦闘シーンなんだけど、どうも相性が悪いのか自分にはイメージしづらくて読むのに難儀した。

 うーん、今回の2巻はなんというか、鴇子がメインのようで、叶葉と九曜は脇役な感じであった。

2013/12/24(火)冬のフロスト(下)

「冬のフロスト(下)」R・D・ウィングフィールド 芹澤恵訳 カバーイラスト・村上かつみ(創元推理文庫2013年)

 児童連続誘拐殺人、怪盗枕カヴァー、そして娼婦をねらった連続殺人に悩まされるフロスト警部。

 事件に関連した人物を片っ端から容疑者だと決めつけ、脅し文句などを散々言った末、容疑者には完全無欠なアリバイがあって無関係に終わり、訴えられると怒鳴られるが、相手のうしろめたいことを指摘してやんわりお帰りいただく、というのを何度も繰り返してて、いっこうに捜査に進展が見られず、読んでてちょっとダルさを感じざるをえないところがあったのはたしか。

 フロスト警部の相棒のマービンが、致命的なミスを頻繁に起こし、ついには女性刑事のリズ・モードが事件に巻き込まれて行方不明になってしまう。

 ところで、このリズ・モード刑事は作中で妊娠していたことに気づき、すぐに堕胎している。それをフロスト警部たちは知ってしまうのだけど、彼らは無言で聞かなかった状態にしていたのが読んでて疑問であった。イギリスでの堕胎行為の扱いはどうなんだろうか。だからなのか、ひとつの生命を処分した罰とでもいうんか、リズ・モードには最悪の悲劇が訪れることになる。

 シリーズを重ねるごとにページ数がどんどん膨らんでいき、今作では上下巻合わせて1000ページもある。もうちょっとコンパクトにまとめてもらってもいいのではと、余計なことを考えてしまったけれど、読み応えは抜群だった。

2013/12/23(月)15×24(3)

15×24(3) link three 裏切者!」新城カズマ イラスト・箸井地図(SD文庫2009年)

 巻ごとに妙に話が飛んでいる気がしてならない。なぜか肝心なエピソードを読み飛ばしてしまっているような。

 自殺志願者である徳永準の確保に成功したものの、なんやかやあってまだ続く。追跡劇の騒ぎでどうやら一人が死んだ様子。また、別方向で、とあるものを追跡しているファブリ一派に巻き込まれた三橋翔太。あまり学はなくて独白でもひらがなが多い三橋翔太だけど、彼の本質を見抜く眼力のようなセンスには目を見張るものがある。

 まだまだ物語は続き、情報が錯綜して、火事やら立てこもりやらバスジャックやらと騒動が次第に大きくなっていく。

 そして気がつくと、この作品に夢中になっている自分がいた。先が気になる。大晦日の話だけど、読み終えるのは年を越しそうなのが残念。

2013/12/22(日)エアリアルシティ

「エアリアルシティ」川上稔 イラスト・中北晃二(電撃文庫1997年)

 最初の序文に、「英国は、書物という文字世界に封印されている。」とあり、書物の中の世界「架空都市――倫敦(ロンドン)」で繰り広げられる物語であることがエクスキューズされるという、かなりぶっ飛んだ世界観で、人外の人狼やら天使に悪魔に自動機械(ザイン・フラウ)らが人間のように暮らすという設定。

 書物の世界ということで、周囲を認識する際にオーバーライド(言像化)、隠すことをオーバーロス(言影化)、感情が他人に伝わるほどにおもてに出ることをオーブン(外燃詞)、冷静になることをセルフコントロール(字己清詞)、死んで存在が消滅することをアッシュ(焚滅)など、造語が次から次へと出てくる。

 今でこそ映画「マトリックス」やバーチャルゲームなどが普及しているので、こういった仮想世界の設定は受け入れやすい環境になっているけど、1997年当時のライトノベル読者にとって、この世界観は相当に難解だったのではと懸念してしまう。

 物語もアクションがいきなりはじまるのは定番ながらも、人外な存在を排除するヴァレスらの目的が不明であるとか、主人公格のアモンの紹介がどうにもうまくないとか序盤は相当にとっつきにくいのは確かだし、独特の世界観と設定をうまく説明しきれておらず、わかる人だけわかってくれればいいという飛ばし具合なので、読む人を相当に選ぶというのは、どうにももったいない。

 アモンとクラウゼルとの交流がよかったので、この部分をじっくり描いて欲しかった。正体不明の警部と秘書のフィルの存在感のなさは一体。

2013/12/21(土)俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長

「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長」哀川譲 イラスト・H2SO4(電撃文庫2010年)

 盗作騒動で回収騒ぎを起こしたんだったかの問題作。

 平々凡々な主人公の兎沢紅太郎(とざわこうたろう)は、容姿端麗で成績優秀で身体能力(略)な超絶美少女の伏城野(ふしぎの)アリスと幼なじみで、アリスに積極的にアプローチされる毎日を過ごしていたところ、魔王生徒会の会長候補として祭り上げられ、対立候補の勇者生徒会に正体を暴かれなければ次年度の生徒会長になる、という設定。

 人間と人外が共存しているという特異な設定があるんだけど、人外が社会に与えている影響とかそういう描写は一切なしで、お互いに憎みあう関係になっており、主人公の通う学校はモデルケースとして共同の学校に通っているという冷静に考えると無茶な設定だけど、そこは敢えて目をつぶる!

 平々凡々と言っているわりに目隠し将棋というのか、頭のなかに将棋盤をイメージし将棋勝負するのは得意で、アリスに勝てる唯一の特技を持っていたり、かよわい人外が人間の不良にイジメられていて、それをやめさせて解決させたりとかなりいい奴。

 主人公は現在2年生で、これまでそういったイジメの場面ではどうしてたんだよとか、幼稚園児の頃からも人外たちと一緒だったらしいけどどうしてたんだよとか、そこは敢えて目をつぶる!

 小気味よくテンポのいいやり取りとか、ツンツンしている吸血鬼少女にプロポーズ同然のことを言って勘違いされたり、いつのまにか人外女子たちのハーレムが出来上がっていたりと定番ながらも楽しい面白い。

 ヒロインで対立する勇者候補のアリスも、天然ではるけれど正義感にあつく、素直で主人公に一途で過剰なアピールをしてきて、なぜかそれをさけまくる主人公。アリスが主人公のどこにひかれたのかもそれなりに設定されていて、これが勇者アリスと主人公のやりたかったことと合致してうまくまとまっていた。

2013/12/20(金)ネクラ少女は黒魔法で恋をする(5)

「ネクラ少女は黒魔法で恋をする(5)」熊谷雅人 イラスト・えれっと(MF文庫J2007年)

 シリーズ最終巻。亡くなったサユキ先輩を蘇生させるという生徒会長の吉野。真帆の憧れる一之瀬先輩などを巻き込んで、死者蘇生がおこなわれることに。

 一巻からずっと引っ張ってきた亡き渋谷サユキ先輩のことにようやく決着。真帆も内気な性格を克服したのか前向きになって、さわやかなラストだった。最初は目を引かれた真帆の毒舌は随分とマイルドになって、黒魔法が趣味という点が異質だけれども、それ以外は憧れの先輩に思いを募らせるフツーの女子という具合で、さわやかな恋愛&青春小説という形で終わった。

 最後の真帆のさわやかな笑顔のイラストとかかわいいので、余韻もほんわかしていた。真帆と妹の夏樹とのやりとりが出てくる度に、毎回いい雰囲気を味わわせてもらった。
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