2013/12/19(木)ネクラ少女は黒魔法で恋をする(4)

「ネクラ少女は黒魔法で恋をする(4)」熊谷雅人(MF文庫J2007年)

 4つの短編集。主人公の空口真帆の妹・夏樹が、彼氏とうまくいってない話。この短編は妹の夏樹が語る形式で、黒魔法に傾倒している姉の真帆を身近な第三者から見た視点というのが新鮮で、その真帆の行動とかがかわいらしいというか、妹との関係であれこれあってホッコリする話。

 ほかには、凄腕格闘家で美人の雛裏しのが痴漢騒ぎに巻き込まれる話と、四人兄弟の長男でいつもドジ役をやらされている三年生の湊川容一が、どう見ても小中学生にしか見えない弓ヶ浜三癒を意識する話、そして、演劇部の合宿で豪華な別荘にいき、空口真帆が憧れの一之瀬先輩と急接近したのかしなかったのかという話。

 その一之瀬先輩なんだけど、優等生らしいのはわかるんだけど、それほど行動力というかリーダシップを発揮するようなところもなく、すごく堅物というか融通のきかないところがあって、すごく無個性な人物としか感じられず、まるで魅力を感じないんだけど、こういう人物が女性は好みなんだろうか。

 うーん、仮に真帆と一之瀬先輩の性別を逆転させたとして、美人で優等生で生真面目な先輩がいたら、憧れはするだろうし付き合ってみたいとは思うか。

2013/12/18(水)冬のフロスト(上)

「冬のフロスト(上)」R・D・ウィングフィールド 芹澤恵訳 カバーイラスト・村上かつみ(創元推理文庫2013年)

 フロスト警部シリーズの第5弾。デントン署の人員が他の署の要員として出払っており、人手不足に困窮しているというのに、次から次へと事件が発生して、手がかりもまるでつかめず、捜査にいきづまるフロスト警部。

 ジャック・フロスト警部は下ネタ大好きで、嫌味な署長のマレットのことをいつもネタにして笑いをとったり、勤務実績の数字をごまかしたり、管轄内で起こった事件を一人の犯罪者がやったことにしたてあげるのは日常茶飯事。

 立て続けに起こる事件にうんざりしつつも、長年の経験からくる勘を働かせて粘り強く地道な捜査を続けて、あとから発生した事件から手がかりとなる糸口をつかんで、ジワジワと真相に迫っていく。

 フロスト警部には、名探偵ばりの頭脳明晰さはまったくなく、睡眠時間を奪われ、眠気を我慢して現場検証をしたり、捜査指示を出したりして悪態もつくけれど、冗談が好きで仲間思いでもあって、ワーカーホリック的に動き続ける。

 ちなみにこのシリーズを知ったきっかけは、「神戸在住」というマンガ。このマンガの主人公である女子大生が、「クリスマスのフロスト」を笑顔で友人に見せているコマがいまだに覚えている。

2013/12/17(火)15×24(2)

「15×24(2) link two 大人はわかっちゃくれない」新城カズマ イラスト・箸井地図(SD文庫2009年)

 6巻完結の2冊目。大人数のキャラが登場するので覚えるのが大変。やっぱり、尖っている性格や独特の考え方をしているキャラはわりと記憶に残るものだなと。

 とあるものを追っているヤクザらしき男たちが登場。すぐに暴力沙汰を起こす三橋翔太たちをファミレスで軟禁状態にして、洞窟ゲームという嫌がらせな言葉遊びのやりとりがある。小学校の低学年ぐらいの思考しかないけれど天才的なケンカセンスを持っている三橋翔太の「つながってるとこは、どこも肝心だ」という人体の急所を見抜くところはバトル要素としてゾクリと興味をひかれるものがあった。

 なんやかやあって、自殺志願者の徳永準と、死に興味がある伊隅賢治らが、謎のじいさんと双子とあったりしつつ、車椅子の西満里衣や芸能人のオサリバン愛をはじめとして、これまでの登場キャラのほとんどが井の頭公園に集結。

 主要登場人物も出そろい始めて、それぞれのキャラも性格が見えてくるようになりつつ、物語も大きく動き出してきて面白かった。

2013/12/16(月)エスケヱプ・スピヰド

「エスケヱプ・スピヰド」九岡望 イラスト・吟(電撃文庫2012年)

 昭和一〇一年。かつて八洲(やしま)国軍の大型基地を擁すほどの街だった尽天(ジン天)。大戦が終わったのかまだ継続中なのかは不明ながら、都市機能が壊滅して廃墟同然となった尽天でほそぼそと暮らす50人ほどの集まりがあって、彼らはこの尽天から抜け出ようと画策しているが、大きな障害が立ちはだかっており、その対策を日々思案している。

 生き残りである少女の叶葉(かなは)は、先の大戦で生きながらえた兵器である九曜と出会い、主としての契約を結ばされることに。兵器として特化した九曜は日常生活に溶け込もうとせず、住民から距離を保って叶葉を守ろうとする。

 虫を模した兵器を繰って、最強とうたわれた竜胆(りんどう)との対決がメインか。ドッグファイトを展開するという点では、昨日読んだ「パンツァーポリス1935」と、大筋は同じ。昭和一〇一年という仮想設定を用意しての、独特な電脳サイバー技術用語の応酬には最初は戸惑ったものの、中盤ぐらいからはマイルドになってそこそこ読みやすかった。

 殺人兵器としての九曜の主(あるじ)でもあるヒロインの叶葉は、九曜を人間として接していて、仕事にも精を出して張り切る姿に好感。

 なのだけど、立ちはだかる最強の竜胆がなぜそこまで戦闘をしてくるのかの理由が不明だったし、なんというかその、話の筋自体はよく言えば王道というのかありがちで、強大な敵に対抗する突破口というのがちょっと貧相というかショボイというか。最後はなんでそういう展開にしたのかもちょっとよくわかんないのが本音。

 冒頭に登場する、叶葉を身うけした伍長がとても印象に残ってて、いつ登場するのかとずっと期待していたのだが。うーむ。

2013/12/15(日)パンツァーポリス1935

「パンツァーポリス1935」川上稔 イラスト・しろー大野(電撃文庫1997年)

 精霊石という物質を利用した精霊式機関で発達したパラレル世界。舞台は1920年の伯林(ベルリン)。ロケットの開発で失敗して宇宙に飛び出してしまって、月の衛星軌道上で死亡したパイロットではじまる序章。そこから息子のヴィクターが大気圏を離脱できる飛行戦闘艦のカイザーブルクを開発。ドイツ軍に捕まってあれこれされて、博士のパウルがカイザーブルクで助けにやってきて逃走。マイアーという20歳の女を巻き込んで、カイザーブルクに唯一立ち向かえるフランメンリッターを操るマイアーとの対決をのぞむ。

 わりとストレートな活劇もので気軽に読めた。定番のドッグファイト的なものや、ヴィクターの軽口やらマイアーが自分の目的を見つけて行動をはじめるなどあれこれありつつ、宇宙をからめるというのがおおまかな筋。気軽に読めるのだけど、今誰が喋っているのかが中盤まで理解するのが大変だった。終盤は上達していて読みやすかった。

2013/12/14(土)ネクラ少女は黒魔法で恋をする(3)

「ネクラ少女は黒魔法で恋をする(3)」熊谷雅人 イラスト・えれっと(MF文庫J2006年)


 アスガルズという組織の特派員となった毒舌女子の空口真帆。クラスに不幸少女の宮脇弥生が転校してくる。時を同じくして、この付近で悪魔を検知したという。真帆は捜査に乗り出すが。

 このシリーズの売りである真帆の毒舌ぶりがマイルドなものになっており、ますます少女の青春小説という部分が色濃くなってきた。

 真帆の男子に対する態度とか心中でなにを考えているのかが、こういう少女小説を読み慣れていない自分には新鮮だった。

 いつも冷静な憧れの一之瀬先輩の過去が少し露見したりしつつ、入部した演劇部の度胸をつけるための歌を第三者のいるところで歌って落ち込む真帆だったりして、それなりに日常生活をなんとかこなしている描写がありつつ、悪魔とのそこそこの激突やらなにやらいろいろ。

 この作品はいつ打ち切られてもいい感じに毎回話が終わるので、最終巻でも、真帆はみんなと同じ距離感のままで演劇部とか学校生活を続けていく、みたいに終わりそう。

2013/12/13(金)未来改造のススメ

「未来改造のススメ 脱「お金」時代の幸福論」岡田斗司夫・小飼弾(アスペクト2010年)

 いろいろなことを対談したというよりは雑談した本。

 コンテンツにお金を払うとバカにされるという意識、ベーシックインカムにして時給を下げて国際競争をしてみたらどうか、でも日本が製造業を勝ち取るのはどうかと、などなどのいろんな雑談。2010年当時の社会情勢を踏まえた内容のものも多く、今頃読むのは賞味期限切れという感は否めない。

 小飼弾は問題解決をしたがりなのか、問題提起をちょっとでもすると、どこからかデータを引用してきての具体的な解決話になってしまう。バカ話とかお笑いネタにも真面目に果敢に挑んでくる感じ。ちょっとした冗談も言えない。

2013/12/12(木)魔術はささやく

「魔術はささやく」宮部みゆき(新潮文庫1993年)

 平成元年発表作品。

 タクシー運転手のおじさんが女子大生をはねて死亡させてしまう。事件には不可解な点があったことから、高校生の日下守(くさかまもる)が少しずつ調べていく。すると、東京で起きた3つの死亡事故につながりのあることがわかる。

 高校生が行動するというのは一般小説では珍しいか。社会的に弱者の立場だからなのか、彼にはちょっとした特殊技術が付与されており、事件解決の糸口をつかんだり、嫌がらせを解決する手段として発揮される。でも、それで大活躍するというものではなく、ちょっと肩透かしをくらうかもしれない。

 すごく地に足のついたサスペンスだった。ちょっとした群像劇にもなっており、一人の女性にジワジワと死が迫ってくるホラーにもなっている。主要人物の日下守にしても、父親の汚職をネタに執拗な嫌がらせをしてくる同級生がいたり、身近なところで死のにおいのする事件も連続して発生と、どこかサイコな雰囲気も。それらにはすべて理由があるのだけど、ちょっとトンデモ系な仕掛けで、ここでひっかかる部分はあったか。

 日下守は重い業をせおってはいるけれど、彼にはいくつもの居場所があり、支えてくれる家族や友人に知人と、驚くほどに協力者が多いことに自然と気づかされる。

2013/12/11(水)なるだけ医者に頼らず生きるために私が

「なるだけ医者に頼らず生きるために私が実践している100の習慣」五木寛之(中経出版2013年)

 80歳を迎えた著者の、実践している養生訓な本。

 身体の不調を聞き取る身体語という感知能力を身につけようとか、病気の根治を期待せずになるべく暴れさせないようにする、自分の老いを受け入れる、歯磨きの時に片足立ちをして今日はどこまでできるか楽しむ、薬に頼ってもいいけど常用しない、人間をひとくくりにした栄養バランスや健康基準を鵜呑みにせず、それぞれ個々の自分自身にあった食習慣や薬の服用方法を考える、といったことを提案している。

 これまで健康本とか健康サイトをいくつか見てきた、という既知の人には、これといった目新しい部分はないと思う。少なくとも40歳以上じゃないとあまり共感できない内容でもある。

 自分自身としては、そのとおりだなと思うことも多く、再確認させられた部分がほとんどだった。

2013/12/10(火)重力ピエロ

「重力ピエロ」伊坂幸太郎(新潮文庫2006年)

 遺伝子情報を扱う企業で働く泉水(泉水)には弟の春(ハル)がいて、春は母親が連続強姦魔にレイプされて生まれきた。その母親は数年前に他界し、父親は現在、癌で入院中。最近、近所で連続放火の事件が起こり、そこにはなにかルールのようなものがあった、という前提から話がはじまる。

 ものすごくテクニカルというか、遺伝子やグラフィティアートに強姦事件にまつわる出来事など、作中のセリフやら行動やらなにやらすべてに全部意味があり、それぞれ理由があってつながっていて、ため息をするぐらいの質の高さ。

 タイトルの「重力ピエロ」というのも、いびつな状態の家族が必死に家族になろうとしていることで、常に背負っている重いものから解き放たれるという比喩だと連想させられる。

「俺たちは最強の家族だ」という父親の言葉が印象的。両親と兄弟がそれぞれにとても仲が良く、その触れ合いとか距離感とかがたまらない。

 それぞれの人物は本心を決して語ることがなく、春は偉人や古典文学などの言葉を執拗に引用してみせる。引用はしょせん借りものであって、有名人という権威を利用した会話テクニックに過ぎず、独自のアイデンティはない。けれど、この引用にはまた別の理由があるというところに唸らされた。

 ほかにもあれこれと今現在も考え中で、いまだに消化できずにいる。それだけ多くの要素が詰め込まれていた。
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